SEO成功報酬サービスはもうすぐ崩壊する説
2015/04/13カテゴリー:SEO対策コラム
世の中のSEO業者が提供する契約形態として、「完全成功報酬型」がよく挙げられます。
一ヶ月の中で、指定順位以内にランクインした場合のみ料金が発生するというパターンです。
利用者側にすれば、「上位表示されなければ無料」なので、気軽に始めやすいというメリットがあります。(一方で注意点もたくさんあるのですが、それはまたの機会に)
さて、この成功報酬SEOというサービスは、将来崩壊するだろうなと思っています。
理由は主に2つあります。
- 近い将来:検索順位の定義が曖昧になる。
- 将来:検索順位の重要性が低下する。
近い将来、検索順位の定義が曖昧になる
検索順位はユーザー一人ひとりの環境によって異なる場合があります。
これが、今までは「異なる場合があります」で片付けられる程度だった部分もあるのですが、だんだんとその順位の差が大きくなってきています。
これについては3つの理由があります。
パーソナライズ順位
Googleにログインしていれば、Googleは過去の検索履歴などからユーザー属性を特定し、自分がよく見るサイトや関係性の強いサイトを検索上位に優遇させます。
Aさんのパソコンで検索して1位のサイトが、Bさんのパソコンだと下位、という事が発生します。
地域別順位
ヴェニス・アップデートによってローカル情報を取り扱うWebサイトへのアルゴリズムが改良されました。これにより、検索を行う位置などによって検索結果が異なってきます。
名古屋で検索1位のサイトが、東京から検索すると下位、という事が発生します。
デバイス別順位
2015年4月21日からはモバイル・アルゴリズムが変更になり、サイトがモバイル対応しているかどうかがモバイル検索結果に影響するようになりますね。
さらに、将来的にはデスクトップ検索とモバイル検索のアルゴリズムを完全にセパレートする可能性もあります。
Googleは既にスマホ専用アルゴリズムのためにチームを編成し開発にあたっているようです。現在、どの段階にあるのかはIllyes氏にもわからないそうで、現段階でGoogleからのアナウンスはありません。
また、現在ではデスクトップとモバイル間でアルゴリズムを変化させようとしていますが、将来的にタブレットの普及が更に進めば、今度はタブレット向けのアルゴリズムやアップデートがあっても不思議ではありません。
デスクトップで検索1位のサイトが、スマートフォンから検索すると下位、という事が発生します。
検索順位が1人ひとりカスタマイズされたものに
このように、ユーザーの環境によって検索結果が大きく異なるという事態は既に起こっていますが、アルゴリズムの改良により更に激しくなりそうです。
日本国内でのヴェニス・アップデートの影響と見られる現象は2014年末に確認されたばかりですし、
モバイル検索が変動するのはまさにこれからです。
Googleにとっても、ユーザーごとに最適化された検索結果を提供したいはずでしょう。まるで執事のように、自分の嗜好や探している情報を理解してくれる賢い検索エンジンを作りたいはずです。そう考えると、一律の検索順位というのはGoogleにとってあまり意味を成さないものになります。
将来、検索順位の重要性が低下する
1990年に世界初の検索エンジン「Archie」が誕生し、1995年にYahoo!、そして1998年にGoogleが産まれました。
事前にディレクトリ登録をしておかないと検索対象にならなかったYahoo!に対し、Googleは全文検索ロボット型で、独自のアルゴリズムにより検索キーワードに対するサイトの価値を判断し順位付けを行うという全く新しいタイプの検索エンジンでした。ここでGoogleはインターネットにおける「検索」という行為に革命を起こしたと言えます。
それから17年、Googleは更に検索行為に変化を起こそうとしています。
ユーザーにとってより使いやすい検索エンジンであり続けるために、さまざまなギミックや機能がリリースされています。先述した「一人ひとりカスタマイズされた検索順位」というのもそのうちの1つに過ぎません。
ここではあと2つ、重要視するべき機能があります。
ナレッジグラフ
Googleで「SEOとは」と検索してみます。
するとこのように、検索結果画面の一番上に「SEOとは」という問いに対する答えが出ちゃってますね。
これで僕はもう答えを知る事が出来てしまいました。この情報が足りず、他のソースを確認したい場合は、検索結果に上がっている他のサイトも回ってみますが、この答えで満足すればもう他のサイトを開く事はありません。
次は、ハリソン・フォードの年齢が気になったので、「ハリソン・フォード 年齢」と検索してみます。
72歳かぁ。まだまだ現役なんてスゲェなぁ。
これで検索は終わりました。
検索結果画面上に答えが出てしまっているので、今回もサイトを表示させる事はありませんでした。
極端に言えば、頑張って「ハリソン・フォード 年齢」のキーワードで上位表示させたサイトがあったとしても、クリックされる事はほとんどないでしょう。
この枠が「ナレッジグラフ」です。
検索クエリによってはナレッジグラフだけで用事が済んでしまうので、上がっているサイトを開く必要性がなくなってしまいます。検索順位なんて、誰も気にしなくなりますね。
「検索」以外の検索方法の登場 ー音声検索
人はわからない事があると検索エンジンにキーワードを打ち込み、検索ボタンをクリックします。これは「ググる」や、動詞としての”google”が辞書に掲載されるくらい、僕達の生活に定着した行為です。
ところがこの方法以外に、わからない事を「検索」する方法が登場しました。それが音声検索です。
音声検索はGoogleだけでなく、たとえばiPhoneのSiriでも行えます。
「音声検索なんて結局使わないよ。いまいち定着してないんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカでは10代の若者の50%以上がGoogle音声検索を毎日使っているそうです。
そういえば以前、ジャパネットたかたの高田社長のセミナーを聞いた時、社長も毎日タブレットで音声検索を使うと話されていました。
“機械が苦手な高齢者こそ、話しかけるだけで答えてくれる音声検索はありがたい”と仰っていました。
最近はGoogleもTVCMを打って、音声検索の進化に力を入れています。
Googleが目指しているのは「対話型検索」の実現です。まるで人間と対話するようにWebのデータベースから必要な情報を引き出せるような。
また、Siriも本当のバーチャル秘書のようにもっともっと賢く進化していくでしょう。
これも、ナレッジグラフ同様、検索結果に上がったサイトから、自分の探している情報が載ってそうなサイトを探して・・・という行動は不要になりうる革命です。
調べたいことがあれば、
「名古屋栄で安くて美味しいイタリアンの店はどこ?」
「人参って冷蔵庫で何日くらい持つの?」と問いかけるだけで、GoogleやSiriが答えを教えてくれます。
「ググる」が死語になる未来
ナレッジグラフや音声検索によって、ユーザーは検索順位というものを全く気にする事無く、自分の欲している情報を得られるようになります。
これらはまだ未完全ではありますが、既に実現しつつある現実です。
Googleは僕達の知らない間に、じわじわと革命を起こしています。
「検索」という名の文化の形は、音を立てずに変貌を遂げようとしているのです。
もしかしたら将来、自分の子供にこう言われるかもしれません:
「”ググる”って何? お父さん、昔はGoogleに文字を打ち込んで検索してたの?」
検索順位が一人ずつ異なれば、順位の意味は無くなる
パーソナライズ、地域別、デバイス別によって変化する検索順位と、
ナレッジグラフ、音声検索によって減少する検索順位の必要性。
これによって、順位というものの定義が出来なくなってくるのではないでしょうか。
SEO業者が報告する検索順位は、誰にとっての順位で、何のための順位なのか、という事がいよいよわからなくなってきます。
なので、「検索順位に基づく課金」が成立しなくなるわけです。
音声検索が進化して、本当に「ググる」が死語になるとすれば、誰も検索順位なんて気にしなくなります。
が、これはまだちょっと先の話な気がします。SF映画みたいな話ですよね。
しかし、ユーザーによって検索順位が全く異なり、順位の定義ができなくなるというのは近い将来の話だと思っています。
いまから半年後、1年後に起こっても不思議ではありません。
そうなれば、SEO成功報酬というビジネスサービスは成立しなくなり、前時代の遺物となるでしょう。
SEO対策は無くならない
ここまで言うと、SEO対策自体の意義も無くなってしまいそうと思われるかもしれませんが、それはありません。
パーソナライズだろうがナレッジグラフだろうが、そもそもクローラーがWebサイトの情報を適切に取得できる事が大前提です。
そもそもSEOとは「検索エンジン最適化」の意味ですから、正しいSEO知識でWebサイトを最適化させるための知恵はこれからもずっと求められ続けるでしょう。
original photo credit:Luxt Design