Webマーケティングに大切なことは全てLinkin Parkが教えてくれた -後編
2015/06/30カテゴリー:コンテンツマーケティング
前回に引き続き、アメリカのロックバンド“Linkin Park”が行なってきたWebマーケティングのエピソードと共に、彼らからどんな事を学び取るべきがについて解説していきます。
前編はこちらから:
Webマーケティングに大切なことは全てLinkin Parkが教えてくれた -前編
前回の簡単なおさらい
- Linkin Parkは結成当時、レーベルの反対を押し切り、ラッパー在籍のロックバンドという「強み」を貫き通した。
- デビュー前、レコード会社から相手にされず、ならば自分たちでネットを活用して名前を広めようと思い至る。
- Web黎明期から公式サイトを開設し、ファンとのコミュニケーションを行なった。
- Jay-Zとのコラボライブでは、Webアンケートを通じて”Linkin ParkとJay-Z双方のファン”だけを抽出し、ライブに招待した。
- Twitterをファンとのコミュニケーションに活かす。日本へのチャリティTシャツのデザインについて、Twitterフォロワーからの意見を募った。
- 海外バンドとしては初めてLINE公式アカウントを開設。本国アメリカではバンドのオフィシャルスタンプも自分たちでデザイン。
- Facebookはファンとのコミュニケーションツールであると考えている。Facebookページのファン総数は全世界16位。
- スマホアプリ黎明期からオリジナルゲームアプリを開発。アプリでしか聴けない限定曲まで作ってしまった。
- Steve Aokiとのコラボ曲は、公式発表前にもかかわらずファンに勝手にライブを撮影させ、Youtubeにアップさせて期待感を煽った。
- そのコラボ曲は、オリジナルFacebookゲームをプレイし、プレイヤー達が協力してスコアを達成してはじめて世界解禁とした。
- コラボ曲からオリジナルFacebookゲームへの誘導は、すべてその後発売されるリミックス・アルバムへの布石だった。
テクノロジーとの迎合
スマホアプリを活用したプロモーション
前回ご紹介したゲーム“Linkin Park Recharged”と共に発表されたリミックス・アルバム“Recharged”から間髪入れず、2014年、Linkin Parkは完全最新アルバム‘The Hunting Party”の発売を発表します。
さぁ、もうお分かりかと思いますが、我らがLinkin Parkはもう「普通のプレスリリース」なんて打ちませんよ。
ここでも「ファンが喜ぶ」一風変わった情報告知を行うわけです。
それは、とある「スマホアプリ」との連携企画でした。
ShazamでLinkin Parkの楽曲を認識させる事で、ファンひとりひとりの手のひらの上で新曲を解禁した。
2014年にリリースされたアルバム”The Hunting Party”に収録される新曲”Guilty All The Same”の視聴を、音楽認識アプリ“Shazam”を通じて解禁。
新曲の解禁を、Youtubeでもなければ、ラジオでもオフィシャルサイトでもなく、既存の人気アプリを通じて行なったのです。
ご存じない方に説明しますと、Shazamとはアプリを起動させたスマホに流れている音楽を聴かせると、楽曲の詳細情報を教えてくれるアプリです。(僕はよくお店で流れてる曲が気になる時に使います。)
このShazamに、Linkin Parkの楽曲を何か聴かせると新曲の”Guilty All The Same”が聴ける、というギミックを仕掛けて話題を呼びました。
ここでもやはり「参加型」の手法を取り入れてファンの関心を惹き付けているのが巧みですね。しかも今回は、アプリを起動して彼らの楽曲を聴かせるだけ。前回はゲームスコアをクリアしなければならなかったのに対し、今回はずいぶん気軽に参加できる仕組みになりました(笑)。
先日、サーティー・セカンズ・トゥー・マーズとのダブル・ヘッドライナー・ツアーを行うことを発表したリンキン・パークが、音楽認識アプリ「Shazam」を通して新曲“Guilty All The Same(feat. Rakim)”を公開した。
「Shazam」は、再生されている演奏中の音楽を波形で認識する音楽認識アプリで、リンキン・パークの楽曲を認識させると、新曲“Guilty All The Same”を聴くことができるという。新曲“Guilty All The Same”ではラッパーのラキムがフィーチャーされている。
新曲を自前のゲームを通じて解禁したり、Shazamを通じて解禁したり、Linkin Parkはもはやテレビやラジオといったマスメディアから完全に独立しきっていますね。
日本のベンチャー「PlugAir」との提携
最新のデジタルテクノロジーを取り入れたエピソードとしてもう1つ。
Beatroboという日本のベンチャー企業があります。この企業は、スマホやタブレットのイヤホンジャックに挿すことでさまざまなコンテンツが楽しめるというガジェット「PlugAir」の開発を行なっています。
2013年、Linkin ParkはこのPlugAirをLinkin Park Undergroundの公式グッズとして採用したのです。
Linkin Parkが米ベンチャーのBeatrobo,Inc.(本社:米国カリフォルニア州サンフランシスコ、CEO:浅枝大志)によるサービス、“PlugAirをファングッズとして正式採用した。
“PlugAir”は近年増加中のスマートフォンやタブレットユーザーに向けたCDやUSBメモリの替りとなるコンテンツメディアとして期待されており、アーティストや企業らはこのデバイスを入手することでしか取得できないコンテンツを配信することが可能となるアイテム。
今回、Linkin Parkのファングッズに正式採用され、Linkin Park公式コミュニティである「Linkin Park Underground(リンキン・パーク・アンダーグラウンド)」にて米国圏で正式にデビューした。
このLINKIN PARK限定プラグエアデバイスによって、Linkin Parkの限定配信動画、未公開楽曲、アプリ、グッズなど多くのコンテンツがファンに提供されることになる。そんな“PlugAir”のプラットフォーム構想に伴うキャンペーンが、米国クラウドファンディングサイト「Indiegogo」にて本日よりスタートした。
Linkin Park リーダー/ボーカル Mike Shinoda コメント
限定コンテンツをファンに提供するイノベーティブな仕組みと感じ、PlugAirを採用しました。LPU(リンキン・パーク・アンダーグラウンド)コミュニティとつながる新しくて面白い方法を常に考えていたので、PlugAirはその点においてパーフェクトでした。Linkin Parkがスマートフォン用ガジェット “PlugAir” をファングッズに正式採用!:リンキン・パーク【レコチョク】
Linkin ParkのPlug Air。これをスマホを差し込むと限定コンテンツがゲットできるという仕組み。
かつて音楽が「データ」としてでなく実体ある「器」に収められ、「手」でデリバリーされていた感覚を現代に取り戻すものという意味で、PlugAirは「スマホ時代のCD」と呼ばれ、期待を集めています。
「Beatroboが最終的に実現したいのは、多くの音楽ファンがオンライン上のプレイリストを通じて交流するという新しい文化の創造です。ただ、Spotifyのような定額制のストリーミング配信サービスが普及している欧米と異なり、日本ではプレイリストを作り、シェアし合うという楽しみ方がピンと来ないという人も多い。であれば、日本の音楽ファンにも分かりやすい形でプレイリスト文化を広める突破口として、まず“スマホ時代のCD”を作ろうと考えたのです」
つまり、一般になじみのある「CDの貸し借り」に近い形での音楽交流を、スマホで行えるようにと開発したのがPlugAirというわけだ。
リンキン・パークとのコラボも開始!Beatroboに聞く、メジャー音楽レーベルとの提携を連発できる理由 – エンジニアtype
世界的な大物バンドでありながらも、スタートアップのベンチャー・プロダクトと提携するという姿勢にも刺激を受けますね。
「インタラクティブ性」の追求
ここまで読み進めて頂いた方なら、Linkin Parkの行なってきたデジタル・マーケティング手法がいかに「インタラクティブ性」(=双方向性)に富んでいるかがおわかりかと思います。
最後にふたつ、Linkin Parkが行なったプロモーション、プロジェクトの中でインタラクティブ性が高いものをご紹介させてください。
Facebookを通じて「自分」がPVに登場する”Lost In The Echo”
2012年のアルバム”Living Things”に収録された楽曲”Lost In The Echo”のPVは「インタラクティブコンテンツ」として先進的な取り組みを行なった作品です。
それは、自分のFacebookにアップロードしている写真がPV内に登場する、というものでした。
あなたは、特設サイトhttp://lostintheecho.com/にアクセスし、Facebookとコネクトするだけ。PVの中に、自分や自分の友達を登場させる事ができます。
「Facebookの写真を取り込むようにしたのは、たんに目新しさや奇抜さを追求するためではなく、そうした要素を含んだ物語にしたかったから」そう話すのはこの映像の共同監督を務めたジェイソン・ニッケル。「たんにできるからそうしたというわけではない。ユーザーの日常生活を実際のストーリーに結びつけ、彼らがこれは自分のためにつくられた映像だと感じられるようした」(ニッケル氏)
非常に面白いコンセプトのビデオですが、そこに至った経緯は?
ミュージックビデオについて会話している中から生まれたんだ。ミュージックビデオはここ数年何の変化もない。ちょっとしたストーリーがあって、演奏があって。それだけだ。何も新しくない。OK GOとかK-popの作品がちょっと面白いなと思えた程度だ。でも俺たちは全然違う感じで、ミュージックビデオというフォーマットを真剣に壊したいと思ったんだ。
“Lost In The Echo”インタラクティブ企画の予告編映像。筆者はこの曲が大好きです。
支援金を集めたファンのみが招かれるシークレット・ライブ
もともと2004年よりMusic For Relief(以下MFR)という、環境保護を主な目的とした非営利団体を設立していたLinkin Parkは、ありがたいことに日本が先の震災で被災した際、MFRを通じていかにして寄付金を集めるかを模索してくれていました。
そこで彼らが実行したアイデアは、「Webを通じてファン自ら日本への寄付金を集める活動をさせ、500ドルを集めた先着500組をシークレットライブに招待する」という画期的な取り組みでした。
チェスター・ベニントン(以下、チェスター): 震災の直後、俺たちはツアーを計画する中で、日本のためにみんながお金を寄付したり、時間を割いてくれる方法を探していた。
日本はこれまでほかの国を助けてきたし、国民もそのための協力を惜しまなかった。
俺たちは、ファンが進んで寄付してくれる方法を探していたのさ。何か特別なことがしたかったんだ。MFRのショーで集めたお金を寄付するという俺たちのアイデアのうちの1つが、ファンに寄付金を集めてもらうことだった。俺たちにはいろんな考えがあって、今回のイベントはそういった要素を混ぜ合わせたものだった。
集めたお金がMFRに渡るというイベントこそが、自分たちがやりたかったことなんだ。
俺たちはファンに<secretshowforjapan.com>を通じて自分自身のサイトを立ち上げるよう呼びかけた。
ウェブページを作り、資金を集め、最も多くのお金を集めた人には、ステージの脇からバンドのパフォーマンスを見られるチャンスを与えたんだ。
ファンは限られた人にしかできないことに、ワクワクしていた。小さな会場でバンドを見たり、実際にメンバーに会えるってことにさ。
これは、バンドが稼いだお金を寄付するのとはちょっと違う。それ自体も素晴らしいけど、みんなの話題にのぼるようなチャリティー活動ってのが大事だと思ったんだ。
1人が100万ドルを寄付するよりも、5万人がそれぞれ5ドルを出すってことの方が、はるかに意味があると思ったのさ。
このケースでの目的は、多くの人に「日本の被災者」への関心を寄せさせる事。その目的を達成するために、Linkin Parkは「自分たちでWebサイトを開設し、自力で500ドル集めさせる」という形でファンを参加させ、イベントそのものに大きなインタラクティブ性を持たせる事に成功しました。
(というか、ファンから寄付金を”募る”のでなく、”集めさせる”というのが、チャリティの在り方としてすごく斬新ですね。)
Linkin Parkのこうしたユニークなアイデアのおかげで、遠く離れた海外のLinkin Parkファンたちが日本のために行動を起こしてくれたのです。実際にこの企画を通じて、Linkin Parkのファンたちは日本のために$357,000もの支援金を集めたのですから。
ちなみにシークレットライブには日本のB’zが招かれ、コラボレーション・ステージが披露されました。
Linkin ParkとB’zの会見。稲葉さんが喋る時に隣のチェスターがガン見(笑)
Linkin Parkが教えてくれた”Webマーケティングに大切な事”
ここまで、前編・後編に分けて、Linkin Parkが行なってきたデジタルマーケティングのエピソードをご紹介させて頂きました。
SNS登場以前からWebサイトを通じてファンと意見交換を行い、SNSが登場すれば上手に活用し、
近年ではWebプロモーションの一環としてゲームを公開したり、インタラクティブ性の高いビデオや企画を打ったりと、およそロックバンドとは思えない先進的な取り組みを行なってきたLinkin Park。
我々Webマーケティングの人間は、彼らから何を学ぶべきでしょうか。
僕は、大きく2つあるのではないかと思いました。まず1つ目は…
変化を恐れず、前向きに取り組むこと
常に一歩先を行く彼らは、いつでも「次」を見据え、現状の手法に満足する事なく新しいものを自ら積極的に試し、取り入れようという姿勢を持ち続けています。
Mikeは、「新しいテクノロジー」についてこう語っています:
年老いた人が、「私はATMにお金を入れたりしないぞ。この箱からお金が無くなったらどうなってしまうんだ!」みたいに考えるのを知っているから、俺たちはその逆であろうと思っているんだ。新しいテクノロジーを恐れるのではなく、むしろ最前線に行ってやろうってね。
勿論、俺たちに何が適しているのかを見極める必要はある。俺たちが取り入れるものは偽りのないリアルなものでなければならない。アプリケーションでもサービスでも、しっかりと時間をかけて理解しなければ、俺たちにとって良いものなのか分からないだろ?
俺たちは単純に未来を追いたいわけじゃない。沢山テストをして、自分たちに何が一番適しているのかを判断するんだ。面白そうなものに対してはそういう姿勢でいるよ。
「Webマーケティング」にかかわらず、Webの世界は非常に移り変わりが早い。まるで次々押し寄せる波のように、毎日新しい情報やツールが登場します。時々、このスピードに気疲れしてしまう瞬間もあるのではないでしょうか。
そんな時は、Linkin Parkを思い出してみてください。
俺たちは単純に未来を追いたいわけじゃない。沢山テストをして、自分たちに何が一番適しているのかを判断するんだ。面白そうなものに対してはそういう姿勢でいるよ。
新しいテクノロジーやツールを見つけたなら、とにかく一度試してみる。その中から、自分たちの目的達成に役立つものを見つけていけばよいのです。
でも、日々登場し続ける新しいテクノロジーやツールの情報を、どこから集めればよいのでしょうか。
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Marketing Bankをチェックしておけば、新しいテクノロジーやツールの情報を見逃す心配がありませんね。
ちなみにMarketing Bankのサイト内に登場している元ソフトバンクホークスの江尻さんは2014年までソフトバンクホークスでプロ野球選手として活躍されていました。
先日お会いしたのですが、プロ野球選手から「高身長×イケメン×話が面白い×気さくで爽やか」というパーフェクトビジネスマンへの華麗な転身を遂げられておられました。
さて、話をLinkin Parkに戻しましょう。
我々が彼らのデジタルマーケティング手法から学ぶべきポイント、2つ目は…
エンターテイナーであること
Webマーケティング活動を通じて、企業は「商品をどう売るか」という事を考えてしまいます。もちろん、それはそれで大切な事なのですが、昨今のコンテンツマーケティング・ブームが掲げる理念「ユーザー目線」「コンテンツ主体」がそうであるように、Linkin Parkもまた「いかにファンを楽しませるか」という事だけをひたすらに追求しているのです。
Linkin Parkのメンバーはいつもインタビューで「俺達はファンを楽しませる新しい方法を探している」という主旨の発言を繰り返しています。
彼らはステージ以外の場所であっても、Webやデジタルツールを通じたエンターテイナーなのです。
それは彼らがまだレーベル契約するより昔、地元のライブハウスに出ていた無名バンドだった頃、ストリートにいた頃からずっと持ち続けていた信念。
「どうやったらファンの声を聴けるだろうか?」
「どうやったらファンを喜ばせ、びっくりさせる事ができるだろうか?」
サイトやSNSを活用したり、Webゲームを作ったり、アプリと連携したり、ベンチャー企業とタイアップしたりするのは、すべて彼らの「エンターテイナー」としての信念がそうさせたのでしょう。
企業はもっと、世の中を楽しませる事ができるはずなんです。SNSだろうがアプリだろうがYoutubeだろうが、Webだろうがリアルだろうが、楽しませる方法は問われない。
オレたちはファンクラブを通じてさらなるいろいろな方法でみんなと交流を図っていくよ。
僕はいつもファンと繋がる新しい方法を探し続けているから、この企画はホントに楽しかった。
Facebookはファンとのコミュニケーションツールだね。
LPU(リンキン・パーク・アンダーグラウンド)コミュニティとつながる新しくて面白い方法を常に考えていたので、PlugAirはその点においてパーフェクトでした。
いつもエンターテイナーとして世界中をあっと驚かせる仕掛けを提供し続けるLinkin Parkの姿に、Webマーケターとして見習うべき大切なポイントがたくさんあると感じてやみません。
http://www.musicman-net.com/artist/12093.html