【体験談】1年で300記事投稿したコンテンツマーケティングがうまくいかなかった理由
2015/10/20カテゴリー:コンテンツマーケティング
お久しぶりの更新でございます。元気ですか?僕は元気です。
最近はユナイテッドリバースさんのWebサイトに記事を寄稿したりしました。コンテンツマーケティングにおけるオウンドメディアの記事の「編集」についてのノウハウをまとめています。読んでみてね!
記事の仕上げスパイス12種】ライティング素人でも大丈夫!コンテンツマーケティング記事を「編集」する方法
さて今回は、自ら体験したコンテンツマーケティングの「成功とは言えない事例」について紹介します。
確かにPVは増えた。でも本当に効果はあったのか?
このクライアントさんは、ECサイトを運営しています。
サイトの内容や商材は詳しく明かせないのですが、仮に「スニーカーの通販サイト」という事にしておきましょう。
実施内容
今回のサイトでは、ECサイトのサブディレクトリ内にブログを設置し、「ユーザーのためになる」記事コンテンツを投下し続けることで、
- ロングテールキーワードによる集客増
- ユーザーに好印象を与え、コンバージョン改善
を期待していました。
記事は2014年10月から投稿を始め、約1,000文字の記事コンテンツをこれまでに約300件蓄積しています。
記事内容としては、主に
- スニーカーの選び方
- スニーカー用語解説
- スニーカーの楽しみ方・魅力の紹介
- スニーカーの最新ニュース
- スニーカーブランドや、レアなスニーカーの紹介などのお楽しみ系
というような、初心者にもスニーカーの世界をわかりやすく伝える事ができるような編成となっていました。
このオウンドメディアの効果
間違いなくセッション数は増やすことができた
確かに、記事ページを増加したことによりロングテールキーワードのインデックス数が増加し、それに伴ってアクセス数も増加しました。
データを確認すると、2015年の9月のOrganic Searchからの流入数は昨年同時期と比較して約73%アップしていました。
サイトが1年前と比較して大きく変わったところといえば、オウンドメディア用ディレクトリに記事を約300本入れたというのが主で、取り扱い商品を拡大したわけでもありません。
流入ページを確認してみても、記事ページがPV増に大きく貢献していた事は事実であるとわかりました。
でも、コンバージョン数は変わらなかった
ところが、せっかく検索エンジンからの集客数を大幅に増やすことができたのに、肝心のコンバージョン数およびコンバージョン率が全く変動しないという事態に陥りました。
これをGoogleアナリティクスで詳しく調査してみます。
まず、行動>サイト コンテンツ>すべてのページ を開き、
そこで「コンバージョンに至ったユーザー」でセグメントをセットします。
そうすると、コンバージョンしてくれたお客様に見られていたページが一覧でチェックできます。
あとは検索欄に、オウンドメディアコンテンツが収められているディレクトリ名を入力してやれば、「コンバージョンしたユーザーは、ぶっちゃけ記事コンテンツを見てくれていたのか?」が数字で明らかになります。
するととても悲しい事に、コンバージョンに至ったユーザーの踏んだセッションの中で、コンテンツ記事のセッション数が占めていた割合はたったの2%という数字が!
やや強引に言い換えれば、コンバージョンしたユーザーのうち98%は、コンテンツ記事を見る事なくとも購入に至っていた、という事になります。
(2%という数値はユーザー単位でなくセッション単位で算出していますので、「CVユーザーの98%はコンテンツ記事を見ていない」と言うと事実と異なってしまいますが。)
スニーカーの楽しみ方や、ブランド紹介といった内容の記事がCVユーザーに見られていたエビデンスは皆無に等しく、かろうじて「スニーカーの選び方」系の記事がかすっている程度でした。
つまり、「スニーカーの購入を検討している潜在層が、うちのサイトのオウンドメディアの記事を読んでもらって好感を持ってもらえれば、直ぐにとは言わなくとも当店での購入につながってくれるのではないか」という楽観的な展望はこの1年の実験で見事に打ち破られ、あとに残ったのは、
オウンドメディア記事は売上にはほぼ無風だった
という悲しい事実だけとなってしまいました。
同様の事態が日本全国で起こっているはずだ
コンテンツマーケティングやオウンドメディアがブームになってしばらく経ちます。
オウンドメディアについてWebで情報収集すれば、どこを開いても
「すぐに効果が出るものではない」
「ユーザーのためになるコンテンツを…」
「”売り”を前面に出した記事は駄目だ」
などの”教え”が目に飛び込んでくると想います。
この教えは、確かにその通りです。
ユーザーのほとんどは「広告」を嫌っており、セールスを感じた瞬間に拒絶反応を示します。
もはや露骨な広告の時代は終わって、コンテンツを通じてユーザーに寄り添い、誰かが困ったときに参照されるコンテンツや、本当に役立つ情報・面白い情報を届ける事ができれば、結果としてそのユーザーは企業のファンとなり、優良顧客に育っていく…。
全く間違っていないし、美しい流れだと思います。
でも現実はシビアです。
“広告を打たずとも、コンテンツ記事を書き続けるだけで全国から問い合わせがやってくる!”
コンテンツマーケティングはきっと全国にこんな風に伝聞されているのではないでしょうか。
その中でも、異常なガッツと向上心、勘の良さと文才のすべてを持ち合わせた方がオウンドメディアに取り組み、気付いたらなんだかうまくいってしまい、「小さなお店や個人商店でもコンテンツマーケティングはやれるんだ!」という上辺だけの希望が蔓延した結果、形から入ったはいいけど結局コケているサイトが日本中に溢れかえっています。
もしかしたら、体力ある大企業であれば、オウンドメディアの効果が現れ始める時期を3年、5年と長い目で見据えて、じっくりと取り組む事ができるのかもしれません。
それどころか、認知向上を目的とし、オウンドメディア経由の明確な売上をトラッキングしないのかもしれません。
資金も時間も人的リソースも極めて限られた中小企業が、このスタンスで取り組んではいけないという事です。強者と弱者は戦略が違うってやつです。
僕個人は、オウンドメディアの効果や可能性を心から信じています。
そもそもこのサイト SEO Sceneが僕自身のオウンドメディアのようなものであり、こいつのおかげで独立後も仕事が絶えませんし、むしろ広がり続けています。
これは、オウンドメディアという武器が強力である事のほかならぬ証明だと考えています。
では、なぜ今回のクライアントは、1年間で300記事も打ったのにうまくいかなかったのか?
記事のクオリティや記事拡散体制などに改善余地はあるかと思うのですが、一番大きな理由はコレだと思います。
1年間で300記事打ったオウンドメディアがうまくいかなかった理由
それは、
記事がサイトのユーザーのニーズにそぐわないものだった。
ただそれだけだと思います。
だからこそ、記事閲覧ユーザーがCVしてくれることもなければ、CVユーザーに見られていたというエビデンスも取れなかったのです。
アホじゃねぇかと思うくらい当たり前の事ですが。
好きな女の子に振り向いてもらうために、1年間かけて必死で筋トレを続けた結果ムキムキボディを手に入れたけど、
「あたし筋肉質な男の人苦手なんだよね…」て言われたみたいな感じです。違うか。ぜんぜん違うわ。
では、どうすればよかったのか
一歩引いて物事を考えてみると、
「オウンドメディア内のUIや導線、記事内容をいかに改善するか?」
よりも
「そもそもオウンドメディアじゃないといけないのか?」
という(元も子もない)疑問にぶち当たります。
オウンドメディアが流行ってるから、これをやろう!というのは、あくまでマーケティング側の都合です。
都合どころか、それよりももっとくだらない「流行ってるらしいから」という理由でしかありません。
その発想そのものが、ユーザーのニーズにそぐわないものだったのではないかと振り返ることができます。
このクライアントさんの心の中には、「良いスニーカーをお客さんに届けたい」という想いが確かにあります。
その想いを具現化する方法として、オウンドメディアというフレームを通じて1年間やってきたわけですが、どうやらユーザーにはあまり響いていなかったという事実がわかったのです。
おなじ手間とお金をかけるのであれば、無理にオウンドメディアとかコンテンツマーケティングの軸で考えるのではなく、
そもそも商品ページはこれでいいのか?
本当にユーザーの購入に必要な情報はわかりやすく提示されていたか?
という、基本に立ち返る方針を組むこととなり、これまでオウンドメディア記事制作に向けていたリソースを、商品ページの充実に当てていく事になりました。
Web担Forumさんの人気コーナー
『コンテンツSEOは単なる“コンテンツの量産”にあらず。お客さまのためのコンテンツマーケティングであるべし!』では、
単なる“コンテンツの量産”にとどまるならば、何も生まれないことを肝に銘じるべきだ。
コンテンツを制作するときに、お客さまの問題を考えて、お客さまがそのコンテンツにたどりやすくすることまで考えて、コンテンツを制作する。
するとそれがSEOにも有効で、コンテンツマーケティングとして機能する。
これが本来の考え方だ。
と説かれていますが、これには首を振りすぎて首の骨が折れるんじゃねぇかレベルで同意です。
コンテンツマーケティングにおいて、量と質は比例関係にない
コンテンツの量産は本質的ではないと知りながらも、それでもコンテンツ・ボリュームは非常に重要です。
僕のところに「検索エンジンから集客ができない」とご相談いただくサイトには、共通項があります。
それは「圧倒的にコンテンツ不足」であることです。
たとえばECサイトであれば、サイトには主に商品ページがあるだけ。
その商品ページも、カタログ掲載スペックに簡単な紹介文が添えられているだけ、という場合がほとんどです。
僕が検索エンジンだったとしても、このサイトは検索ユーザーにあまり紹介できないですね、というか紹介できるところが無いですよね、と思ってしまうようなサイトです。
そういったサイトは必ずコンテンツの強化をお勧めします。
特にWordpressなどのCMS(コンテンツ管理システム)を活用すればHTMLなどに疎い方でもブログ感覚で簡単に記事コンテンツを作成できるので、自然とオウンドメディア的なコンテンツ展開を考える事になります。
この手法は、SEOの観点からも、またソーシャルなども含めたWebマーケティングの観点からも正しい方向の施策であると考えています。
事実、今回のスニーカーサイトの事例のように、検索エンジンからのトラフィックを向上させたり、ある程度意図的にキーワード検索順位を改善させる事も可能だったりします。(変なテクニックはやらないよ。僕はそういうの好きじゃないから。)
記事数について、はじめのうちは担当者さんに記事を書いていただく作業に慣れていただき、感覚をつかむために「ひと月に15記事」というような記事数ノルマを設けても良いでしょう。
ただしそれはあくまでトレーニング目的であって、「数を打てば良い」というものではない、というのがコンテンツマーケティングの難しいところです。
コンテンツマーケティングの質は、その量に比例しません。
また、本当にユーザーのニーズを考慮したとき、コンテンツマーケティングという手法がいつだって正しいというわけではありません。
あなたが取り組んでいるコンテンツマーケティングは、何が目的でしょうか?
その目的と、いま取り組んでいる施策は、しっかりハマっているでしょうか?
最後にちょっとそれっぽい事を言って、シメさせて頂きます。
Content is king.
But Content Marketing is not always king.