【SEOと孫子の兵法】1つのキーワードに固執しない(作戦編)
2014/02/02カテゴリー:SEO対策と孫子の兵法
作戦編 “SEOにおける作戦プランとは”
僕はよく、SEO対策における目標とは何なのかを考えます。多くの方が、SEOとは「キーワードでの上位表示」であると認識している事と思います。そして、「上位表示させるキーワードはビッグキーワードの方が良い」=「ビッグキーワードの上位表示を成功させているSEO会社が凄い」という図式が成り立っているのではないでしょうか。
かならずしもそういうわけではない、というのが僕の考えです。確かに検索数の高いキーワードで上位表示するに越したことはありません。
しかし、ほんとうに特定のキーワードで上位表示させることは、絶対的正義なのでしょうか。僕がそう考えるようになったのには、きっかけがあります。
ある時、僕が毎月訪問させて頂いている企業さんの定例打ち合わせで、担当の経営コンサルタントさんにこう言われました。
「キーワードで上位表示してもらえるのは、もちろん有難い。それでおたくらはSEO的な結果が出せて喜んでるかもしれないけど、実際それで売上が上がってるわけじゃない。」
他にも、こんな事がありました。
成功報酬型で契約頂いてるクライアント様から、しっかりと上位表示に成功しているにも関わらず、解約希望の連絡がありました。
理由をお伺いすると、こういう理由でした。
「確かに依頼したキーワードで上位表示は成功しているが、特に売上は上がっていない。」
それ以来、僕は「ほんとうのSEOってなんなんだろう」「SEOにおける戦略ってなんだろう」と考えるようになりました。
特定のキーワードで上位表示する事は、必ずしも経営の助けになるわけでないという事を知らしめられたのです。
従来の「いつ上がるかもわからないビッグキーワードを、長い時間かけて狙う」スタイルを疑問視するようになりました。
ビッグキーワードを狙えば、上位表示までの道のりは、当然長引く事となります。
孫子の兵法第二章、「作戦篇」には、戦いが長引く事について、以下のように説かれています。
戦争が長引くという事があれば、軍を疲弊させて鋭気をくじくことになる。その状態で敵の城に攻めかけることになれば戦力も尽きて無くなり、だからといって長い間軍隊を露営させておけば、国家の経済が窮乏する。
そもそも軍も疲弊し鋭気もくじかれて、やがて力も尽き、財貨も無くなってしまったら、外国の諸侯たちはその困窮につけこんで襲いかかり、たとえ味方に優秀な人材がいようが、防衛する事ができなくなる。
だから、戦争には拙速(多少まずくても、素速く切り上げる)というのはあるが、巧久(うまくて長引く)という成功事例はない。そもそも戦争が長引いて国家に利益があるというのは、あったためしがない。だから、戦争の損害を充分知り尽くしていない者には、戦争の利益も十分知り尽くす事はできないのである。
ビッグキーワードでの上位表示は、一朝一夕で成功するものではありません。そしていつ成功するかも、正直言って見通しが立てづらいのです。
SEOに限らず経営戦略として、いつ成功するのか、そもそも本当に成功するかもわからないものに、時間や費用や人材を充てるという戦略は果たしてアリなのでしょうか。
兵法でも説かれているように、戦いが長引いたという成功事例はありません。1年以上もかけてひとつのキーワードで上位表示させようとするのって、はっきりいってかなり効率が悪いんじゃないでしょうか。
「長期戦SEO」からの脱出を
僕ならこう考えます。最終的にビッグキーワードを上位表示させたいという目標は結構です。そこで終わりじゃ無くて、小さな目標をその前にたくさん置くのです。たとえば中〜大規模のECサイトなら、「商材名+通販」とか、「商品名+評判」とか、コンバージョンにつながりやすく、かつ比較的上位表示までに時間のかかりにくいロングテールのキーワードもたくさん考えておきます。
よく、「amazonのサイトはSEOに強い」と言われますが、それは何故ですか?「通販」という超ビッグキーワードで検索した時に1位表示されているからですか?違いますよね。
ここに書いた事は、なんでもない当たり前の事かもしれませんが、顧客側も業者側もまだまだ長期戦SEOの発想に囚われている気がします。
戦争の上手な人は、国民の徴兵は繰り返さず、食糧を何度も遠征先に運び出さない。軍需品は自分の国のものを使うが、食糧は敵地のものに依存する。
国家が軍隊のために貧しくなるというのは、遠征の際に食糧を遠くまで運ばせるからだ。(中略)だから優れた将軍は、遠征したら出来るだけ敵兵の食糧を奪って食べるようにする。敵地で調達した食糧は、(自国から物資輸送する事を考えれば)自国の食糧の20倍の価値がある。
孫子はとにかく、兵士や国民を疲弊させる事、心が離れる事をNGとしています。計篇に登場した戦争における「5つのポイント」の第一項目に「道」がありました。これは、将軍(上司やリーダー)が兵士、国民(部下やスタッフ)と志を1つにせよ、という内容でした。
戦争が長引き、国民は何度も徴兵され、遠い敵地まで何度も物資運搬に駆り出され・・・という事があれば、兵や民は当然疲弊し、戦争の意義や目的を次第と失っていく事でしょう。兵や民が志を失った状態の国家が戦争に勝てる訳がなく、敵からの襲撃を防衛できる訳もありません。
SEOに対しては、いくらSEOコンサルタントや担当者が「このビッグキーワードで上位表示を目指す!」と意気込んでいても、いつ成功するかもわからない目標のための作業を延々と繰り返すのには相当なエネルギーや根気を要します。きっと続かないでしょう。
だから、1つのビッグキーワードに固執するのでなく、上位表示させやすく、売上にも繋がりやすい小さなSEO対策をたくさん行っていくべきだと思うのです。
今月はこんなキーワードが上がってきた!そのキーワードで、1件成約があった! 毎月こんなふうに進捗があれば、きっともっと真剣になってくれて、コンテンツ追加・更新も積極的に行うようになります。結果として長い目で見れば、そういう姿勢こそがビッグキーワードでの上位表示に必要なもの他なりません。
さて最後に、孫子の兵法「作戦篇」は、以下の言葉で締めくくられています。
以上のようなわけで、戦争は勝利を第一とするが、長引くのはよくない。
戦争の利害をわきまえた将軍は、人民の生死の運命を握るものであり、国家の安危を決する主宰者である。